「わからない」を拾うー介護に直面した家族の不安をキャッチする

takenokaze11

娘さんの「わからない」

ずっと一緒に暮らしてきた90代のお母さんの、一時的な施設入所を決めた娘さん。
私の勤め先の施設を選ばれました。
入院して認知症が進んでしまったお母さんを、できるだけ早く家に戻してあげたいというご希望でした。

入院前にはデイサービスを使っていた経験があり、お母さんの状態に合わせて家事や入浴のサポートを増やしておられましたし、この先の排泄の介助にも抵抗はないとも話されていました。
だから、
「介護は初めてなので、わからないから教えてほしい」
という娘さんの言葉を、私は軽く受け取っていました。

でも、自宅に帰る準備の相談をしていた時、娘さんが福祉用具のレンタルをケアマネジャーさんを通さずご自身で手配しようとされていることに気がつきました。
そして、こんなこともおっしゃいました。
「介護講座を受けてから母を迎え入れようと思って申し込んだんですけど、間に合いませんでした。」

その言葉を聞いて、はっとしました。

あぁ、本当に「わからない」と思っておられるんだ…!

若い頃の大失敗

ずっと忘れられずにいるできごとがあります。
相談職として駆け出しの頃のことです。

ある日、体が動かなくなった奥さんのために介護保険を使いたいとの依頼を受け、そのお宅に伺いました。
主介護者になりそうなご主人に、できるだけわかりやすく説明しようとしました。
ご主人は、
「何だかわからない」
と苦笑しながら何度かおっしゃいました。
私はそれを謙遜だと思いました。
介護保険に馴染みがないだけで、手続きはちゃんとできたから。家の中やご夫婦の身なりにさほどの乱れもなかったから。
その後の支援はケアマネジャーさんにバトンタッチしました。

しばらくして、そのケアマネジャーさんから言われました。
「あのご主人、かなりの認知症だよ。『全然わからない』っておっしゃるから、よくよく話を聞いたら、忘れるし、理解できないし、本当に困ってたみたい。」

ものすごく恥ずかしかったです。
気づけなかった。いや、気づこうともしなかった。
そのご夫婦の困りごとに向き合えず、浅く事務的な手続きのお手伝いをしただけで終わらせてしまっていたのです。

「わからない」をそのまま受け取る

「謙遜して言っているだけだろう」「手続きができているのだから理解している」「介護保険のことを知らないだけで、介護自体はできるだろう」…、そんな思い込みが生まれることがあります。

でも、「わからない」は「わからない」なのです。
そのまま受け取って、何がわからないのかを一緒に確かめることが、専門職として最初にすべきことでした。

「わからない」を拾って、向き合う

改めて、娘さんの「わからない」に向き合おうと決めました。
歩ける?トイレは?食事は?歯磨きは?お風呂は?どこまで手を貸せばいい?家に戻ってお母さんが落ち着かなかったらどうする?
私ひとりでは解決できないことだらけです。
だから周りの専門職の力を最大限に借ります。

全ては解決できないけれど、お母さんがお気に入りのお家に戻り、娘さんと穏やかな時間を過ごせるように。
そのために、「わからない」を丁寧に拾いたいと思っています。

ABOUT ME
悠
九星気学・姓名鑑定・人の心のあれこれを、日々、実験・実践中。 介護界隈でこっそり学ぶ、午年四緑木星です。
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